新型コロナウイルスについて思うこと(町医者の雑感)

 風邪の原因には大雑把に言って細菌とウイルスがあります。細菌は自分だけで生きていくことが出来ますが、ウイルスは自分だけでは生きていくことが出来ません。他の生物に寄生しないと増殖したり、エネルギーを作ることが出来ません。ということは、ウイルスは果たして生き物なのか、生きていると言って良いのか、それとも物体としてただ存在しているだけなのか非常に話は複雑になります。

 難しい話はさておき、細菌であれ、ウイルスであれ、人間に感染すると命を脅かすほどの困った症状を引き起こすことがあるやっかいなやつがいます。ウイルスの立場になって考えると、自分が生き残るために(生きているかどうかもわかりませんが)、あらゆる努力をします。例えば、すぐに突然変異します。例として、我々にとって身近なインフルエンザウイルスですが、かかるとつらい思いをするために予防のために毎年ワクチンの接種をします。それにもかかわらず、毎年流行し学級閉鎖などがあちこちで発生し、今年のワクチンは外れだ、などと毎年のように言われます。なぜなら、インフルエンザウイルスは生き残るために毎年毎年その形を変えて、ワクチンで免疫をつけても、次の年にはそのワクチンが効かない形に変わってしまっているのです。

 さて、昨年末から世界を恐怖のどん底に突き落としている新型コロナウイルスですが、発症した最初の中国武漢型のウイルスは3月頃で一旦終息したと思われています。変わって武漢型が強力になりヨーロッパで大流行した欧州型に変異して6月以降は欧州型が流行していると考えられています。現在感染者数が増えている北米、南米のウイルスが欧州型かどうかはわかりませんが、数ヶ月ごとに形を変えながら世界中のあらゆる場所で流行しています。そのために流行の波という物が起きて、急に増えたり減ったりします。

 ここで、私自身が思うこととして(私は専門家ではありませんので、町医者の思いつきと考えて下さい)、ウイルスが数ヶ月ごとに形を変えてしまうのならば、現在世界中で先を争って開発しているワクチンも出来上がった頃には違う形のウイルスが流行して、効かなくなっているのではないかと言う心配があります。実際インフルエンザワクチンも前の年のワクチンはもう効かないので、その年に流行る型を予測して毎年違うワクチンが作られています。今流行している新型コロナウイルスに対して有効なワクチンを一生懸命開発して完成した来年にはもうワクチンの効かない形に突然変異していた、と言うことが起こるのではないかと心配しています。つまり、ワクチンが完成してもあまり喜ぶことではなく、治療薬、インフルエンザウイルスで言えばタミフルリレンザ、イナビルと言った治療薬ができないと本当の意味で新型コロナウイルスの対策にならないのではないかと心配しています。そして、ワクチン完成までに1年ぐらいと言われていますが、治療薬の開発にはおそらく2,3年かもっと長い時間がかかると思います。

 もう一つ思うこととして、ウイルスは他の生物に寄生しないと生きていけません。ところが、病原性が強すぎると寄生した生物がすぐに死んでしまいます。つまり、致死性の高いウイルスは流行せず、ウイルスの立場で言えば生き残ることが出来ません。数年前に流行したSARSがその代表例になります。SARSも同じコロナウイルスが原因の病気ですが、SARSの場合、感染すると重症な肺炎を起こし、約15%の方が亡くなりました。重症化すると言うことは感染した人は家にいたり、病院に入院したりして、あちこちでウイルスを撒き散らすようなことはしません。また、亡くなる方も多いので、そのままウイルスも消失します。実際に、SARSに有効なワクチンも治療薬も今のところ開発されていませんが、流行は終わっています。ところが、新型コロナウイルスの場合、致死率は約1〜2%と言われています。そして、約8割の方が感染しても無症状または軽症と言われています。つまり、感染した人があちこち出歩いてウイルスを撒き散らす可能性があると言うことです。私の悪い予想ですが、今後新型コロナウイルスは生き残るために病原性を強くするのではなく、むしろ弱くしていくのではないかと思います。その方がウイルスの立場で言えば生き残る可能性が増えます。弱くすると、感染しても元気な人がいるのでその人達は日常生活の中でウイルスを周囲に撒き散らす可能性があると言うことです。

 最終的に何が言いたいかと言えば、私の心配事として、この新型コロナウイルスとは数年がかりの長いつき合いになるのではないかと言うことです。もちろん、有効なワクチンや治療薬が早く開発されて新型コロナウイルスが終息してほしいと強く願っています。ただ、医療従事者として、あと数年はこの状況が続く覚悟も必要ではないかと、最近思うようになってきました。

 町医者の心配事でした。外れてくれれば良いなと思っています。

「手足口病」 昨年の100分の1

 昨日、新聞で「今年の手足口病は昨年の100分の1」と言う記事を見ました。統計を取り始めた1981年以来で今年は最低水準らしいです。

 例年7月下旬から8月下旬にかけていわゆる夏風邪と呼ばれる「手足口病ヘルパンギーナ咽頭結膜熱(プール熱)」が流行します。当院にも例年夏の時期には1日に数人から多い日は10人前後来院することもあります。ところが、今年は今のところ週に1人いるかいないかぐらいです。私の印象としても100分の1は納得です。

 ぐずついた天気が続いている事も関係あるかも知れませんが、一番大きな原因はやはり新型コロナウイルス対策としての手洗い、マスク等の感染予防が非常に役に立っている、と考えられます。

 新型コロナウイルスの感染は全く終息せず、感染者数はどんどん増えています。今年は夏休みも短く、登校日が増えて、まだまだこれから暑くなります。新型コロナウイルスのためのみと考えずに、手洗い・うがい・マスク・ソーシャルディスタンスは万病の予防と考えて、これからも続けましょう!

 

イネ科花粉 一旦終息

 6月中はぱっとしない天気が続いていましたが、7月に入りようやく春の花粉症も終わりに近づきました。7月8月は花粉症は一旦落ち着き、風邪も大流行はしません

 ただし、夏に流行るプール熱アデノウイルス感染)、手足口病ヘルパンギーナなどもありますので、要注意!

 そして、何より新型コロナウイルスが未だに終息の見通しが立っていません。このまま、風邪が流行する9月10月を迎えるのは本当に心配です。

 引き続き、マスク、手洗い、ソーシャルディスタンスに気をつけていきましょう!

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イネ科花粉が飛んでいます!

 そろそろ、春の花粉症のシラカバ花粉が減ってくる頃ですが、入れ替わりに5月下旬からイネ科花粉がたくさん飛んでいます。例年6月いっぱい飛んでいますので、あと1ヶ月要注意です。

 コロナ対策で外出を控え、さらには病院受診も控え、マスクをする習慣のお陰か、今年は花粉の量が多い割には4月、5月はあまり花粉症の患者さんは来院しませんでした。

 ただ、これから暖かくなり、自粛も解除になり、外に出る機会も多くなると思います。くしゃみ・鼻水・鼻づまり、目のかゆみ、のどのイガイガ・咳などが1週間以上続く場合は花粉症などのアレルギー性の症状の可能性がありますので、お困りの際はお近くの耳鼻科でご相談下さい。

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シラカバ花粉 大量飛散!

 昨年から予想されていたことではありますが、4月26日頃より一気にシラカバ花粉の飛散量が増えました

 例年の観察花粉数(1cm2)が100前後、一番多かった2年前のピークでも400ですが、今年は1000近くになっています。例年の10倍、一番多かった2年前の2倍以上です。

 新型コロナウイルス対策としての外出自粛、マスク着用が花粉症対策にも繋がっていますし、病院受診を控えている方も多いので、受診患者数はあまり多くはありませんが、推奨されている換気をすると屋内にも沢山の花粉が入り込みますので、今年は苦労します。

 3密を防ぐためにも病院受診を強く勧めることはしませんが、過去に処方歴のある方は極力手順を簡略化して対応しておりますので、電話等でご相談下さい。

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せっかく新築したのに、春遠し・・・

 今は世界がコロナを中心に回っている状況ですね。こんな世界が訪れるとは夢にも思っていませんでした。

 世界中の方々が不安な毎日を過ごし、政治は混乱し、医療現場は医療崩壊寸前です。クラスターが発生した北海道がんセンターは私が医学部を卒業して3年目に赴任した病院です。とても他人ごとには思えません。

 うちのクリニックも4月1日に隣の新築のビルに移転して、ピカピカの設備で気持ちよく患者さんを迎えるつもりでした。4月から北海道は花粉症の本番を迎えますので、本来は困っている方はどんどんいらして下さい、と言うべき所を、今は医療対応も簡略化しなければならず、極力受診を控えるように指導しなければならず、新築早々、換気と消毒の毎日です。せっかく新しくした設備も半分は眠ったままです。

 私たちスタッフも万が一にも院内で感染が広まらないように緊張の毎日です。今は、どうしても軽症、不要不急の症状であれば極力受診を控えるように、どうしても受診が必要な場合は最小限の人数で受診していただき、密集を避けるためにも待ち時間を極力少なく、そのために診療も短時間で終わらせる必要があります。

 このような対応をするために新築したわけではありませんが、コロナウイルスの状況が落ち着くまで仕方ありません。当院の受診を希望する患者様には大変ご不便ご迷惑をおかけしていることと思いますが、感染が落ち着くまでみんなで力を合わせて乗り切りましょう。コロナを克服した暁にはたっぷりとお付き合い致します。

【急性の嗅覚・味覚障害の対応について】

 阪神藤浪晋太郎投手が新型コロナウイルスに感染したことが判明し、その症状が嗅覚障害「においを感じない」と言う症状だったと報道されています。WHOの報告では感染者の約9割が発熱、約4割が倦怠感、約2割が咳・息切れの症状が出ていた、と報告していますが、嗅覚障害については調査中となっています。ただし、イタリアからの報告では約3割が嗅覚や味覚の障害が出ていたと報告しています。

 詳細な報告はこれから増えるでしょうが、現段階では他に症状(鼻みず、鼻づまり、くしゃみなど)が無いにもかかわらず、突然においや味がしなくなったら新型コロナウイルスに感染している可能性が否定できません。万が一、自分に「においがしない」「味がしない」という症状が出たらすぐに検査を受けた方が良いのだろうか、と不安になりますね。 

 この場合の対応の第一目的は「症状改善」ではなく「感染拡大防止」になります。このような患者様から当院に相談があった場合の対応として、

 

  • 家族にうつさないためにも自宅でも必ずマスクをしてもらう。
  • 他に症状が無ければ2週間程度の自宅待機をしてもらう。
  • 発熱・咳がでれば帰国者・接触者相談センター(札幌市の場合、011-272-7119)に連絡してもらう。
  • 1週間経ってもにおい・味が戻らない場合も帰国者・接触者相談センターに連絡してもらう。

 

 となります。診察も受けられず、薬ももらえないと不安や不満に感じる方も多いと思います。ただ、急性の嗅覚障害・味覚障害に対する治療はほとんどありません。また、藤浪投手もそうですが、軽症の場合は新型コロナウイルスであろうが、無かろうが数日で症状が改善してくることが多いです。むしろ、熱も無い新型コロナウイルス感染者が病院・職場・学校などに外出することによって他の方にうつす方が深刻です。

 国を挙げて新型コロナウイルスに立ち向かう苦しい時期ですので、苦しいこと、不満に思うことも沢山あると思いますが、みんなで協力してこの難局を乗り切りましょう!