抗生物質が効かない!

 私が医者になった20年以上前から抗生物質が効かない耐性菌は大きな問題になっていた。ただ、それに合わせて新しい抗生物質も次々と作られてきていたので、効かなくなったら違う抗生物質を使えばいいや、ということで抗生物質の乱用は続いていた

 

 ところが、抗生物質の開発も限界に近づいており、この先数年間は小児用の抗生物質は開発されないらしい。そうなると、中耳炎や副鼻腔炎の子ども達をたくさん診察する耳鼻科医は困ってしまう。

 

 一番の問題点はウイルスが原因の風邪細菌が原因の中耳炎・副鼻腔炎が区別されることなしに全て抗生剤が使われてきたことだ。これは患者側と医者側の両者に問題がある。患者側はつらそうな子供を間近に見ていて早く治るのならより強いであろう抗生物質をほしがるし、医者側もウイルスが原因の風邪には抗生物質が効かないのを知りながら患者が安心するのなら、と深く考えずに抗生物質を処方してきたことによる。

 

 私は中耳炎や副鼻腔炎の合併がなければ少々鼻水が出ようが、熱があろうが、咳が出ようが、抗生物質は必要ないと思う。最近の患者さんやママさん達はとても理解が良いのでそこを丁寧に説明すれば十分納得してくれるのでありがたい。そうは言っても、抗生物質を出さなかったばかりに私が診察したその夜に高熱が出たり、耳を痛がったりして救急病院に駆け込み中耳炎の診断で抗生物質が処方され、ようやく痛みが治まった、ということが時々ある。そんな時は自己嫌悪に陥ってしまう。難しいですね

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