新型コロナウイルスについて思うこと(3月1日)

 私が医師になってから日本国内でこれ程大きな影響を与える感染症の流行は初めてです。一応医療従事者である自分でも毎日の対応に戸惑っていますから、多くの皆さんは様々な情報に恐怖を感じ、不安と混乱の中で困っていることと思います。具体的な統計データやウイルスに関する専門的な情報は日々更新されますので、報道機関を参考にして頂くとして、当クリニックを利用されている身近な人々のために私個人の思うところを書いておこうと思います。

 

【良く聞く「正しく怖がりましょう。」について思うこと】

 これにはおそらく、二つの意味があると思います。一つは、目に見えないウイルスだけど、油断すること無く色々なところにいると思って常に注意しましょうと言うこと。二つ目は過度に警戒したり、デマに惑わされて、やらなくても良いことやったり、買わなくても良い物を買ったりすることの無いように、と言うことだと思います。

 具体的なことはニュースで毎日のように報道されていますので書きませんが、このような状況では集団心理による一種のパニックのような状態になります。何を信じて良いのかわからなくなりますが、基本的には公的な機関や専門家が言っている最新の情報を(「こう言っていたよ。」という人からの又聞きでは無く)直接、自分で聞いたり見たりしたことを信じた方が良いと思います。そのための情報収集に敏感になるのは悪いことでは無いと思います。ただ、全部を信じる必要は無いので、その辺の見極めが大事だと思います。

 

新型コロナウイルスの特徴について思うこと】

 何と言っても一番コワイ特徴が肺炎を起こすこと。そもそも肺炎は高齢者において死因の第3位で有り、コロナウイルスと関係が有る無しにかかわらず命に関わる病気です。インフルエンザや他の感染症でも肺炎の原因になりますが、肺炎の合併率が新型コロナウイルスに関しては高いようです。そのため、咳、呼吸苦、胸の痛み,体のだるさの症状が他の感染症より長引くようです。ちなみに、耳鼻科では肺炎の検査・診療は出来ません。

 また、感染力もかなり強そうです。なぜそう思うかというと、たった一人の感染患者の対応をした医師や看護師が感染するケースが多数見られることです。医師・看護師はプロです。対応する相手はほぼ全員病気を持った患者ですので、新型かどうかに関わらず十分警戒して対応しています。ましてや、今はインフルエンザの流行期ですので、ウイルス対策を万全にした上で患者に対応しているはずです。そのようなプロの方々が感染するのは、例えばインフルエンザでは良くあることではありません。私もこの時期は毎日のように数人から多い日は数十人のインフルエンザの患者さんを診察しますが、感染したことは10年以上一度もありません。それを考えると少なくともインフルエンザよりは感染力が強い気がします。

 

【「もっと簡単に検査ができれば良いのに。」について思うこと】

 確かに、現在流行中のインフルエンザに比べると新型コロナウイルスの検査は簡単に出来ないですし、保健所や相談センターに電話しても全然繋がらない状況が続いています。事実として、もっと簡単に検査が出来るようになれば正確な状況がわかりますので、政府・自治体・医療機関そして各個人の方々も対策は取りやすくなるでしょう。専門家の中には実際の感染者が現在発表されている人数の数千倍から数万倍はいるだろうと推測している人もいます。ではなぜ検査が簡単にできないのか。

 政治的な理由や技術的なことについては私は専門家ではありませんし、散々報道されていますので、ここではコメントしません。ただ、日頃インフルエンザの検査をしている印象からすると、検査はタイミングややり方によって結果が正しく出ないことがあると言うことです。インフルエンザの場合、発熱直後に検査をしても陰性に出るけど、翌日にもう一度検査をすると陽性に出ることは良く経験します。ましてや、上気道(鼻やのど)にいるインフルエンザと違って、下気道(気管、気管支、肺)にいるコロナウイルスの場合、鼻やのどを綿棒でこすってもウイルスまで届いていない可能性があります。現在のPCR検査のように時間とお金がかかる検査の場合、何度も気軽に実施することが出来ません。つまり、陰性と判定されても安心できないような検査を全員にやってもあまり意味が無いと言えます。もう少し簡便で早く、安く、正確に行える検査が開発されることを願います。 

 

 最後になりますが、現在インフルエンザB型が流行しています。引き続き、感染対策に全力を注いでこの危機をみんなで乗り切りましょう!