「発熱患者の受診方法の変更」に関して思うこと

 9月4日に厚労省が発熱患者の受診方法を変更すると発表しました。これまでは各都道府県の保健所に設置された帰国者・接触者相談センターに電話してPCR検査を受けるなどの流れとなっていましたが、10月以降はかかりつけ医や身近な医療機関に電話をして新型コロナとインフルエンザの両方の検査を受ける。検査ができない場合は他の医療機関を紹介する、という仕組みに変更するそうです。

 私も以前からインフルエンザ流行期に入った場合の発熱時の診療について心配していましたが、今回の発表にはあきれてしまい、がっかりしました。私の個人的な(がっかりした)意見を書いておきます。

 

【がっかり1;全員に電話対応できない!】

 インフルエンザの流行期には当院のような小さなクリニックでも発熱した患者さんが数十人受診されることがあります。その方々が電話をしてきた場合、当院には電話は1台しかありませんので一度に対応できる相手も一人だけです。これだけで、数十分の時間をとられて、受付業務が止まってしまいます。また、対応する事務職員は医療の専門家ではありませんので、専門的な内容には対応できません。毎回、医師が直接応対していると医師は一人ですので今度は診療業務が止まってしまいます。また、電話がつながらないために、直接クリニックを受診して、窓口で診察を断られる事態が起こるかもしれません。

 

【がっかり2;PCR検査ができない!】

 新型コロナウイルスの診断に必要なPCR検査はドライブスルー方式で代表されるように、患者さんも検査をする人も外部との接触が少ない状態で行うのが理想です。ただ、当院はビルの2階ですので、ドライブスルーは不可能です。そもそも、インフルエンザが流行する真冬に外で検査をするのは少なくとも北海道では無理だと思います。当院は入り口も一つ、待合室も一つですので、発熱患者さんとそれ以外の患者さんの動線を分けることも不可能です。このような施設で無理して検査をするとクラスターが発生する危険性が高くなります。当院のような設備のクリニックはたくさんあると思いますが、このような施設では新型コロナウイルスの検査は難しいと思います。

 

【がっかり3;備品が足りない!】

 新型コロナウイルスに感染している可能性がある患者さんを診察する場合はウイルスを通さない特殊なマスク(N95マスク)、防護服、帽子、グローブ、フェイスシールドが必要です。このような備品は当院のような小さなクリニックでは十分な数が手に入りません。この備品を使わずに検査をした場合、医療者が感染してクラスターが発生します。当然、クリニック全体を消毒しなければなりませんし、2週間以上閉院しなければなりません。結局、患者さんに迷惑をかけることになります。

 

【まとめ】

 愚痴ばかりで申し訳ありませんが、誰かを責めているわけではありません。悪いのは新型コロナウイルスですので、政府や厚労省の方々も苦心して頑張ってくれているのだと思います。

 私たちクリニックで勤務している人間は地元の地域の人々が行き場を失わないように普通の診療がしたいだけです。新型コロナウイルスが流行してからはどこの病院も赤字経営で苦しんでおり私達のクリニックも赤字です!

 理想的には新型コロナウイルスとインフルエンザの両方の検査を同時にできる専用の施設を拡充すること。発熱患者はそのような施設で診察を受けて、そのような病院には十分な備品や資金を援助してあげる。一方、我々のような小さなクリニックは備品や援助はいらないから、発熱以外の患者さんをいつも通り普通に診療できる体制が理想です。

 本当は、みなさんのウイルス対策が効果を発揮して、警戒していたほどコロナもインフルも流行しなかった、と言うのが一番の理想でしょうね。